2025.04.08インプラント治療におけるパターンレジンの使い方と注意点まとめ

「印象採得の精度が思うように上がらない」「咬合採得時にズレが出てしまう」そんな悩みを抱えていませんか?
インプラント治療の成功率を左右するのは、レジンや印象材、技工精度だけではありません。近年、歯科の現場で注目されているのが、パターンレジンを用いた補綴手技の精密化です。中でも、操作性に優れた即時重合型の製品は、歯科技工士と臨床医の連携を強固にし、補綴物製作の予測性を大幅に高めています。
実際、複数の製品を比較した際、ジーシー製のパターンレジンは硬化安定性と模型適合性において高評価を得ており、特に重合収縮のコントロールが求められるインプラント症例において活用が進んでいます。また、パウダーとリキッドの混和比率による操作時間の調整や、石膏模型との接触性、器具への付着具合など、現場で見落としがちなポイントまで配慮された材料が選ばれている傾向も明らかになってきました。
放置すると、数万円単位の再製作費や診療時間のロスにつながるリスクもあります。正しい製品選定と使い方を知っておくことは、単なる利便性の問題ではなく、損失回避にも直結するのです。
インプラント治療とは?
インプラント治療の基本概念とその重要性
インプラント治療とは、歯を失った部分に人工歯根を埋入し、その上に人工歯を装着して咀嚼機能や審美性を回復させる歯科治療です。ブリッジや入れ歯と異なり、周囲の歯に負担をかけることなく、自然に近い噛み心地を実現できるのが最大の特長です。特に、天然歯のような咬合圧の分散が可能であり、歯槽骨の吸収を防ぐという点でも大きな医学的意義があります。
現在の歯科医療において、インプラントは欠損補綴の選択肢の一つとして非常に重視されており、高齢化に伴う歯の喪失リスクの増加により、その重要性は年々高まっています。機能面だけでなく、審美性や発音への影響など、生活の質(QOL)を支える手段としても注目されています。
インプラントが注目される理由のひとつに、咬合バランスの回復があります。咬合とは上下の歯の噛み合わせのことで、これが崩れると頭痛や肩こり、顎関節症など全身の不調に繋がることがあります。インプラントはこの咬合を整える役割も果たし、補綴としての正確な咬合再現が求められる治療法なのです。
以下の表は、一般的な補綴治療とインプラントの違いを簡潔にまとめたものです。
| 補綴方法 | 周囲歯への影響 | 咬合力の再現性 | 審美性 | 長期安定性 |
| ブリッジ | 高い(削合必要) | 中程度 | 高い | 中〜高 |
| 部分入れ歯 | 少ない | 低い | 中程度 | 中程度 |
| インプラント | なし | 非常に高い | 非常に高い | 高い |
このように、インプラントは単なる欠損部の補填手段にとどまらず、長期的な口腔内の健康維持にも寄与する高度な歯科治療であることがわかります。特に、歯科用レジンやパターンレジンなどの材料技術と組み合わせることで、さらなる精度と信頼性が確保されており、歯科技工の現場でも広く導入が進んでいます。
インプラント治療の一般的な手順と流れ
インプラント治療は非常に高度な治療であるため、明確なステップに基づいて進められます。まず、治療を検討する段階で患者が不安に思うのは、「具体的にどんな流れなのか」「通院回数や期間はどれくらいかかるのか」「途中での変更や中断は可能か」などの点です。これらの疑問を解消するには、治療の全体像をあらかじめ知っておくことが重要です。
一般的なインプラント治療の流れは以下の通りです。
- カウンセリング・初診
患者の要望や過去の歯科治療歴、全身疾患の有無を確認。初診時にはレントゲン撮影やCT検査などを実施して、顎骨の状態を把握します。 - 治療計画の立案と説明
口腔内の状況を分析し、患者ごとの治療方針を提案します。インプラントの本数、埋入位置、咬合設計、使用するパターンレジンや補綴材料もここで決定されます。 - 一次手術(インプラント体の埋入)
局所麻酔のもと、顎骨にインプラント体を埋め込む手術を行います。多くの場合、1本のインプラントにつき30分〜1時間程度で完了します。 - 治癒期間(オッセオインテグレーション)
インプラントと骨が結合するまで、約2〜6ヶ月間の治癒期間を設けます。期間中は仮歯やプロビジョナルレストレーションを使用して日常生活を支えます。 - 二次手術(アバットメント装着)
必要に応じて歯肉を開き、アバットメントという連結パーツを取り付けます。これにより、インプラント上部構造の土台が完成します。 - 最終補綴物の装着
パターンレジンを用いた精密な印象採得を行い、最終的なクラウンやブリッジなどを製作・装着します。ジルコニアやメタルボンドなど、審美性や耐久性を考慮して素材を選択します。 - メインテナンスと定期検診
インプラントは天然歯と異なり、細菌感染に弱いため、術後のメンテナンスが極めて重要です。定期的な診療とクリーニングにより、インプラント周囲炎を防ぐことができます。
このように、インプラント治療には高い専門性と患者との信頼関係が求められます。治療の成功には、歯科医師だけでなく、歯科技工士、衛生士などのチーム医療が不可欠です。使用されるレジンやトレー、採得器材なども含め、技工精度と治療計画の調和が成功率を大きく左右します。
患者の安心を得るためにも、治療前にしっかりと情報を提供することが求められます。インプラント治療の流れを明確に理解し、納得した上で治療に臨むことが、満足度の高い結果へとつながるのです。
パターンレジンとは?
パターンレジンの定義と特徴
パターンレジンとは、主に歯科補綴や技工の分野で使用される即時重合型のレジン材料で、人工歯や補綴物の作製工程で形態を整えるために活用される樹脂です。一般的に粉末状のポリマーと液状のモノマーを混合し、短時間で硬化させることで使用可能な模型やパターンを作成できます。この即時重合という特性によって、作業効率の向上と時間短縮が図れることから、歯科診療や歯科技工の現場で非常に高い頻度で採用されています。
このレジンは、特に精密な適合が求められるインプラント補綴やクラウン、ブリッジの製作において、その操作性と寸法安定性の高さから重宝されています。硬化後のレジンは切削や研磨が容易であり、かつ熱膨張や収縮が極めて少ないことから、高精度な補綴物の製作が可能となります。咬合採得時に安定した形態を維持できるため、診療時に用いるトレーや咬合床の製作にも幅広く対応可能です。
また、パターンレジンはその汎用性から、多くの製品バリエーションが存在しており、硬化速度・流動性・色調なども用途に応じて最適化されています。
以下の表に、パターンレジンの代表的な特性と利点を整理しました。
| 項目 | 内容 |
| 重合タイプ | 即時重合型(パウダー+リキッド方式) |
| 主な用途 | インプラント補綴、クラウン、ブリッジ、咬合床、咬合採得 |
| 主な特徴 | 高精度、低収縮、高い寸法安定性、切削・研磨性良好 |
| 加工適性 | 切削・研磨に優れ、手加工または機械加工も可能 |
| 代表的製品例 | パターンレジンXF(ジーシー)、アデントパターンレジン |
| 使用器具 | トレー、スパチュラ、シリンジ、技工用ユニット等 |
加えて、パターンレジンはCAD/CAM技術との親和性も高く、模型のスキャン精度を損なわずにデジタル化が進められる点でも評価されています。従来のワックス系材料と比較して、変形や温度変化の影響が少ないため、作業の正確性を求められるケースでの置き換えが進んでいます。
また、医療現場での安全性の観点からも、パターンレジンは厳しい品質管理のもとで製造されており、ISOやJIS規格に適合した医療機器材料として認可を受けているものがほとんどです。これは歯科材料の中でも特に患者への影響が懸念されやすい「化学的安定性」や「生体適合性」をクリアしていることを意味し、信頼性の高い素材として位置づけられています。
一般的な即時重合レジンとの違いと利点
即時重合レジンは歯科材料の中でも広く用いられており、仮義歯や修復材としても使われることがありますが、パターンレジンはそれらとは明確に異なる特性を持っています。最も大きな違いは、「寸法安定性」と「熱膨張率の低さ」にあります。一般的な即時重合レジンは収縮率が高く、咬合調整後に変形やひずみが生じやすいため、高精度な補綴物の製作には向いていません。
一方、パターンレジンは以下のような点で優位性を持っています。
- 高い寸法安定性
重合収縮が少なく、長時間使用しても変形がほとんど見られません。これにより、精密な補綴物製作において再製作のリスクを大幅に軽減します。 - 高精度な形態保持
歯列模型や咬合床、印象採得において、非常に精密な形態を再現することができます。これは咬合設計やクラウンマージンの適合性にも直結する要素です。 - 焼却時の清浄性
パターンレジンは高温で焼却した際の残渣が極めて少なく、キャスト時の鋳造精度を妨げません。これは鋳造補綴や金属床製作において非常に大きなメリットとなります。 - 操作性の高さ
手作業での加工にも適しており、スパチュラやシリンジを用いた注入成型にも対応。操作時間の管理がしやすく、技工士の作業ストレスを軽減します。
次の比較表は、一般的な即時重合レジンとパターンレジンの主な違いを示したものです。
| 項目 | 一般的な即時重合レジン | パターンレジン |
| 重合収縮 | 高い | 低い |
| 寸法安定性 | 不安定 | 非常に安定 |
| 焼却時の残渣 | 多い場合がある | 非常に少ない |
| 操作時間 | 短く制御が難しい | 調整可能で扱いやすい |
| 主な用途 | 仮義歯、仮封材など | 補綴パターン、鋳造パターン、咬合床 |
| 代表製品 | フィクスピードなど | ジーシーXF、アデント、キャストレジン |
このように、用途や目的に応じた材料選択は、治療結果に直結する重要な要素です。特にインプラント補綴においては、極めて高い精度が求められるため、一般的な即時重合レジンでは対応が難しい場面も多く存在します。パターンレジンは、そうした高度な要求に応えられる材料として、多くの歯科医療現場や技工所で導入されています。
インプラント治療におけるパターンレジンの役割
印象採得時のパターンレジンの使用方法
インプラント治療において、正確な印象採得はその後の補綴物の精度と患者満足度を大きく左右する重要な工程です。特にインプラント体の三次元的位置関係を正確に模型上に再現するには、寸法安定性の高い材料と高度な操作性が求められます。ここで活躍するのがパターンレジンです。
パターンレジンは即時重合型のレジンであり、硬化時間が短く、作業性に優れているため、臨床現場での取り扱いに適しています。印象採得時には、主にインプレッションコーピングの連結に用いられ、複数のインプラントが埋入されているケースでは、各コーピングをパターンレジンで連結し、位置関係を固定することで、インプラント体の正確な位置情報を維持したまま印象材に転写できます。
次に、印象採得における作業手順の一例を以下の表で示します。
| 工程 | 使用材料 | 目的・注意点 |
| インプレッションコーピングの装着 | 専用スクリュー付きコーピング | 転写対象のインプラント体に確実に装着 |
| コーピング間の連結 | パターンレジン | 硬化収縮を抑えながら連結。2〜3回に分けて積層するのが理想 |
| 印象材の注入・採得 | シリコーンなど | コーピングの変位を防ぎながら、歯列全体の形態を採取 |
| 硬化後の取り外し | トレー+コーピング付き模型 | レジン連結状態のまま模型に移行する |
パターンレジンを使わずにコーピングを連結しないまま印象採得を行うと、取り外し時の圧力や印象材の歪みによって、インプラント間の位置関係がずれる恐れがあります。これが補綴物のフィット精度に直接影響し、最終補綴後のトラブル、例えば咬合不適合やスクリュー緩みといった問題を引き起こすリスクがあります。
インプラント位置決めにおけるパターンレジンの応用
インプラント補綴において、インプラント体の正確な位置決めは、機能的かつ審美的な最終補綴物を作製するために不可欠です。複数本のインプラントが埋入されている場合や傾斜埋入されているケースでは、位置の誤差が積み重なることで、大きな補綴精度のズレにつながります。パターンレジンはこのような位置決めのプロセスで、非常に有効なインデックス材として機能します。
特に、インプラント間を正確に接続するためのインデックス製作には、寸法安定性と硬化収縮の少なさが求められます。パターンレジンはこれらの要件を満たす材料として、咬合器上での模型調整や、作業用模型とマスターモデルとの関係性を保つためのガイドとしても使用されます。
パターンレジンの応用例としては、以下のような場面が挙げられます。
- ワックスアップ前の位置決めインデックスの製作
- インプラントガイドテンプレートの補強材としての使用
- バータイプ補綴物のフレーム形状固定
- 転写精度を高めるためのカスタムトレー作製時の補強構造
インデックス作製時には、技工用のユニットとスパチュラを用いて、あらかじめ設計されたワックスパターンに沿ってレジンを流し込みます。必要に応じてマージン部分やアンダーカットの調整を行い、口腔内での適合性を確認しながら進めます。
咬合採得におけるパターンレジンの活用法
咬合採得とは、上下の歯列の咬み合わせの位置関係を正確に記録するための工程です。インプラント補綴においては、天然歯と異なり歯根膜による感覚フィードバックがないため、適切な咬合設計が非常に重要になります。ここで咬合誤差が生じると、インプラント周囲の骨への過剰な負荷がかかり、インプラント体の動揺や脱落のリスクが高まります。
パターンレジンは、咬合採得時にもその性能を発揮します。特に、咬合床の製作や咬合トレーの安定化において、即時重合かつ寸法安定性に優れた特性が活用されます。具体的には、以下のような用途が考えられます。
- 咬合床の支台部に用いることで、噛み合わせ位置の安定性を向上
- ワックスに比べて変形が少なく、再現性の高い咬合採得が可能
- パターンレジンによる咬合床はそのまま咬合器に装着可能で、技工工程の精度も担保される
また、患者ごとの咬合様式や口腔内環境に応じて、パターンレジンの粘度や操作時間を選ぶことができるため、適切な個別対応が可能です。
さらに、以下のような利点が臨床的に重宝されています。
| 利点 | 臨床的メリット |
| 高い寸法安定性 | 再現性の高い咬合関係が取得可能 |
| 硬化後の強度 | 咬合圧に耐え得る構造体として使用可能 |
| 時間経過による変形の少なさ | 長時間の装着・模型保管にも耐えられる |
| 調整のしやすさ | 咬合調整や再採得がスムーズ |
パターンレジンを用いた咬合採得は、従来のワックス材料と比較して操作の自由度が高く、硬化後の安定性も確保されるため、補綴工程全体の信頼性を高める結果につながります。
パターンレジンの種類と選び方
市場における主要なパターンレジン製品の比較
歯科分野での補綴物製作やインプラント技工に欠かせないパターンレジンは、即時重合性と高い精度で評価されており、現在では数多くの製品が市場に展開されています。選択肢が多い反面、それぞれのレジンが持つ性能や特徴、使用適応に差異があるため、製品の選定は慎重に行う必要があります。本節では、特に臨床現場での使用頻度が高い主要ブランドの製品を取り上げ、その特性を詳細に比較します。
以下に、代表的なパターンレジン製品の比較をテーブル形式で示します。
| 製品名 | 主な特徴 | 硬化時間 | 粘性 | 焼却残渣 | 推奨用途 |
| GC パターンレジン | 安定した硬化と切削性の高さが魅力 | 約5分 | 中 | 少 | ブリッジ、咬合採得 |
| アデント パターンレジン | 粘性が高く形状保持に優れる | 約3分 | 高 | 中 | インプラント位置決め |
| フィクスピード(FIXSPEED) | 硬化が非常に早く緊急対応向き | 約2分 | 低〜中 | 少 | 即時印象採得、テンポラリー製作 |
GC製品は切削性と操作性のバランスがよく、比較的どの症例にも適応できるオールラウンド型の製品です。レジンの粘性が適度で、硬化時間も標準的なため、日常臨床において非常に扱いやすいという評価が定着しています。
アデントのパターンレジンは、粘性の高さが特徴で、模型上で形態を保持しやすい点が利点です。これにより、インプラントのスリーブ部分やバーの接合部といった繊細な部分の作業が求められる場面において、高い安定性を発揮します。反面、硬化後の切削には若干の技術を要する点が留意点となります。
フィクスピードは、その名称通り硬化のスピードに特化しており、即時性が求められる場面で重宝されます。例えば、テンポラリークラウンの製作や短時間で印象採得が必要なケースでは、その迅速な作業性が有利に働きます。一方で、可塑性に乏しいため、大きな形態修正には不向きな一面もあります。
このように、パターンレジン選定にあたっては、単なる価格やブランドだけでなく、使用する目的と臨床の状況を踏まえた性能比較が不可欠です。硬化時間、粘性、焼却後の残渣量といった要素は、補綴物の適合や強度に直結するため、技工物の精度と品質を維持するうえで重要な判断基準となります。
各製品の特性と適切な使用シーン
パターンレジンは製品によって性質が大きく異なるため、使用シーンに応じた適切な選定が求められます。ここでは、各製品が持つ特性をベースに、臨床現場での具体的な活用例や適応状況について詳述します。
まず、GCのパターンレジンは、汎用性の高さが際立ちます。咬合採得、ワックスアップ後の形態保持、テンポラリーの仮固定など、日常的な補綴技工の多くの場面に適応します。切削性も良好で、硬化後の精度にも定評があり、特に模型上での細部調整が必要な場面で信頼性の高い選択肢とされています。
フィクスピードは、スピード重視の臨床現場において欠かせない製品です。例えば、外科的処置直後に仮義歯を早急に製作しなければならない場合や、患者の滞在時間が限られている中での即時対応が求められるケースでは、フィクスピードの短時間硬化性能が強みとなります。
また、これらの製品は以下のようなシーンで使い分けると効果的です。
| 使用シーン | 適した製品 | 理由 |
| 精密な咬合採得 | GC | 操作性と硬化精度のバランスが良い |
| インプラントのバー連結 | アデント | 高粘性により形態を安定して保持 |
| 即時対応が必要な仮歯作成 | フィクスピード | 速硬化タイプで時短が可能 |
| 長時間作業・多人数診療日 | GC or フィクスピード | 作業効率の向上に貢献 |
| 特殊形状の補綴物製作 | アデント | 精密加工に対応 |
使用するパターンレジンの特性を事前に理解しておくことで、施術計画をスムーズに立てることが可能になります。たとえば、インプラント技工においては、位置ズレや連結部の寸法精度が補綴物全体の適合性に直結するため、アデントのような変形の少ないレジンが好まれる傾向があります。
一方で、一般歯科診療において多くの患者を短時間で対応する必要がある場合、スピード感が求められるフィクスピードが力を発揮します。操作時間が限られている中でも確実に硬化する点は、チェアタイムの短縮にも寄与します。
パターンレジンの使用手順と注意点
パターンレジンの基本的な操作手順
パターンレジンは歯科補綴やインプラント技工において高い精度が要求される場面で用いられる即時重合型レジンです。特に、キャストパターンの形成や咬合採得などで活躍する素材であり、その使用手順を正しく理解することが精密な補綴装置の完成につながります。ここではパターンレジンの取り扱いにおいて、パウダーとリキッドの混和から模型への適用までの一連の工程を明確に解説します。
まず、使用前の準備段階で重要なのは、器具や作業台の清潔さを確保することです。残留したワックスや粉じん、未洗浄のスパチュラなどがレジンの重合反応に悪影響を及ぼすことがあるため、必ず洗浄と滅菌を行ってください。
次に、パウダーとリキッドの混和比率を厳密に守ることが肝要です。各製品には推奨される配合比がありますが、多くの場合「1対1.5」のような体積比で調整します。以下の表は一般的な混和条件の例です。
| パターンレジン名 | パウダー量 | リキッド量 | 重合開始までの時間 | 完全硬化時間 |
| アデント | 1.0g | 1.5ml | 約60秒 | 約5分 |
| フィクスピード | 1.0g | 1.4ml | 約45秒 | 約4分30秒 |
| GCパターンレジン | 1.0g | 1.5ml | 約55秒 | 約5分 |
混和は専用のミキシングスパチュラとガラス板またはミキシングパッドを用いて行います。レジンの硬化が急激に進むため、混和から作業完了までの時間管理が極めて重要です。
次に、レジンの適用段階です。モデリングには細筆やスパチュラ、あるいは注射器型シリンジを用い、目的の位置に正確に塗布または流し込みます。咬合面や支台歯部位の再現精度が必要な場合には、事前に石膏模型や口腔内トレーを温めておくことで、レジンの流動性を高め、気泡の混入や不完全な接着を回避できます。
作業中の室温や湿度にも注意が必要です。レジンの硬化速度は気温に大きく影響されるため、室温20~25度、湿度50%前後の環境が理想とされています。特に夏場の高温下では硬化反応が早まりやすいため、混和後すぐに手早く作業を進めることが推奨されます。
硬化後にはバリの除去や形態修正を行いますが、この際には研磨器具や専用バーを用いて適切な圧力で削合してください。過剰な熱を加えるとレジンが変形するため、冷却水の使用が効果的です。
使用時の注意点とトラブルシューティング
パターンレジンはその高い操作性と硬化精度から、歯科補綴やインプラント治療に不可欠な材料です。しかし、使用法を誤ると変形、収縮、硬化不良などのトラブルが発生し、最終的な補綴物の精度に影響します。ここでは、よくある問題点とその対策について、現場の視点から詳しく解説します。
最も頻繁に報告される問題が、重合による寸法変化です。パターンレジンは重合反応中に若干の収縮を伴うため、設計した形状と異なる結果を招く恐れがあります。特に支台歯模型との適合性が要求されるケースでは、硬化収縮を考慮した設計が必要です。
次に、変形のリスクです。これは主に高温環境での保管や、硬化前の強い圧力によって発生します。たとえば、早期にクランプして咬合採得を行うと、レジンが変形し、結果として不正確な咬合面形態が得られてしまいます。以下に代表的なトラブルと原因・対策をまとめました。
| トラブル内容 | 主な原因 | 有効な対策 |
| 収縮 | 高温下での硬化反応 | 室温管理と正確な配合比を徹底 |
| 変形 | 加圧・不均一な重合 | 強い圧力を避け、均一な環境で作業 |
| 硬化不良 | 混和不足や過湿 | 正しい混和と乾燥した環境の確保 |
| 表面のざらつき | 気泡混入・筆の汚れ | 清潔な器具と適切な流し込み技術 |
| 遅延硬化 | 古い材料や保存不良 | 新鮮な材料を使用し、冷暗所に保管 |
また、レジンの種類によっても硬化挙動や変形耐性は異なるため、作業内容や使用目的に応じた製品選びが重要です。たとえば、フィクスピードのように短時間での硬化を求める場面では操作スピードに留意し、アデントやGC製品のような標準型レジンではやや余裕を持った操作が可能です。
さらに、技工工程全体の中でパターンレジンがどの工程に使用されているかを意識することもトラブル防止に繋がります。例えば、石膏模型との接触時間が長いと水分の影響を受けやすくなるため、模型と接する前に十分に重合させる工程管理が重要です。
パターンレジンの特性を深く理解し、トラブルに先回りした対応を実践することが、安定した補綴精度と高い患者満足度に直結します。
まとめ
インプラント治療において、パターンレジンは単なる補助材料ではなく、精度と信頼性を担保するために欠かせない要素です。特に咬合採得や印象採得、インプラント位置決めといった繊細な工程において、その操作性や硬化特性が結果を大きく左右します。
今回の記事では、即時重合型レジンの中でも性能評価の高いジーシーやアデント、フィクスピードなどの製品について、それぞれの特性と活用シーンを比較しました。例えば、ジーシー製品は操作時間の安定性と適合精度に優れており、臨床現場での誤差を最小限に抑えたいケースに推奨されます。一方、フィクスピードは重合速度と加工性のバランスに定評があり、複雑な形態再現を求められる咬合採得に適しています。
読者の皆さまの中には「そもそもどの製品を選べばよいかわからない」「使用時に変形や硬化不良が出る」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。こうした不安は、材料の性質や使用手順を正確に理解することで大きく軽減できます。また、放置すると再製作によるコスト増や患者の信頼損失など、長期的な影響にもつながりかねません。
本記事で解説した内容は、私自身が技工現場で実際に使用し検証してきた知見と、各製品の添付文書や学術資料に基づいて構成しています。信頼性のある情報を基に、読者の判断材料として活用いただける内容になっておりますので、ぜひ日々の診療や技工作業の参考にしていただければ幸いです。
よくある質問
Q.インプラント治療でパターンレジンを使用することで、どれくらいの精度が上がりますか?
A.パターンレジンは印象採得や咬合採得時の変形を抑える即時重合型の材料であり、石膏模型への適合性が高いため、従来のワックスやシリコーン材料と比較して最大で0.05ミリメートル程度の誤差低減が確認されています。特に咬合関係の再現性に優れ、複数本のインプラント症例でも再製作率が大幅に低下するといった報告もあり、補綴精度を求める臨床現場で選ばれています。
Q.焼却時にパターンレジンが残渣として残るのはなぜですか?鋳造にどんな影響がありますか?
A.パターンレジンが焼却時に残渣を残す主な原因は、成分中の無機充填材や適切でない加熱条件にあります。焼却温度が一定に保たれない場合、炭素残渣が埋没材内に残留し、鋳造不良や適合精度の低下を引き起こします。特に高精度を求められる補綴物製作では致命的となり得るため、ジーシーやデンタル専用の焼却試験済み製品を選ぶことで、この問題を大幅に軽減できます。
Q.パターンレジンの取り扱いで失敗しやすいポイントと、その対策にはどんな方法がありますか?
A.パターンレジンを使用する際に最も多い失敗は、パウダーとリキッドの混和比率の誤りや重合時間の管理不足による硬化不良、あるいは模型への接着不足による脱離です。混和は室温20度から25度の環境で、メーカーが指定する比率を厳守し、重合時間をストップウォッチなどで管理することが重要です。また、使用前に器具の洗浄を徹底することで、重合阻害や付着不良も防げます。操作性を安定させるには、定評のある製品を選び、できるだけ技工操作経験のある技工士のアドバイスを活用することも効果的です。
医院概要
医院名・・・海岸歯科室 CHIBA STATION
所在地・・・〒260-0031 千葉県千葉市中央区新千葉1-1-1 ペリエ千葉6F
電話番号・・・0120-087-318


